※中小企業等の海外出願の権利化に要する費用を補助する、海外権利化支援事業を紹介 外堀知的財産事務所 メールマガジン 2024年11月号
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2024年11月号
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┃ ◎本号のコンテンツ◎
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┃ ☆知財講座☆
┃ (10)特許異議申立制度と特許無効審判
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┃ ☆ニューストピックス☆
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┃ ■「レナウン」の社名が復活(オッジ・インターナショナル)
┃ ■人気ゲーム運営元を特許権侵害で提訴(セガ)
┃ ■電子マネー「PayPay」の決済音、音商標で出願
┃ ■知的財産の取引適正化に向け下請法改正へ(公取委)
┃ ■商標の審査着手状況(審査未着手案件)を公表(特許庁)
┃ ■中小企業等の海外出願の権利化に要する費用を補助(特許庁)
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中小企業等の海外出願の権利化に要する費用を補助する「外国出願・審査請求・中間応答支援(海外権利化支援事業)」を紹介します。
同事業は外国での特許、実用新案、意匠又は商標の出願・権利化を予定している中小企業等に対し、外国出願に要する費用の1/2を助成するものです。
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┃知┃財┃基┃礎┃講┃座┃
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(10)特許異議申立制度と特許無効審判
【質問】
特許庁のJ-Plat Patでライバルメーカーの会社名を特許出願人の検索キーワードにして検索したところ現存している特許権を発見しました。この発明は、当業界では従来から知られていた技術で特許が成立しているのが間違いではないかと思います。当社ではこの技術を採用した製品を市場に出したいと考えています。この特許にどのように対応すればよいでしょうか?
【回答】
新製品が特許権を侵害するおそれが無いものになるように設計変更することが難しく、特許権者に交渉して実施許諾を受けることも難しいのであれば特許無効審判請求を特許庁に提出することが考えられます。
<特許無効審判(特許法第123条)>
特許無効審判は、そもそも、新規性が欠如している、進歩性が欠如している、等の理由で成立すべきでなかった特許に対して、特許は初めから成立すべきでなかったという特許庁の判断を求めて特許庁に提出できるものです。
特許庁での審理の結果「特許は初めから成立すべきでなかったという」効果が発揮されるものとして特許異議申立(特許法第113条)があります。
特許異議申立は、特許庁が行った特許付与について、特許庁自身が見直しを行う契機を広く社会に求めるものです。一方、特許無効審判は、特許権者から「特許権侵害である」として追及を受けるおそれのある者などと、特許権者との間、すなわち当事者間における具体的な紛争の解決を主たる目的にしています。このため、両制度の間には以下のような相違があります。
【特許異議申立制度と無効審判制度との比較】
| 特許異議申立 | 特許無効審判 |
制度趣旨 | 特許の早期安定化を図る | 特許の有効性に関する当事者間の紛争解決を図る |
手続 | 特許庁と特許権者との間で進められる査定系手続 原則として書面審理 | 請求人と被請求人(特許権者)との間で進められる当事者系手続 原則として、特許庁の審判廷に出廷して、口頭審理 |
特許異議申立人・無効審判請求人になれる者 | 何人も異議申立可能 ただし、匿名での申立は不可 | 利害関係人のみが無効審判を請求できる(利害関係人:特許発明と同種の製品を製造する者、実際に特許権侵害で訴えられている者、類似の特許を有する者、等)。 |
申立て・請求の時期 | 特許掲載公報発行の日から6月以内に限って申立可能 | 設定登録後いつでも無効審判請求可能(権利の消滅後でも無効審判請求可能) |
異議申立の理由、無効審判請求の理由 | 公益的理由(新規性・進歩性欠如、明細書の記載不備、等) | 公益的理由(新規性・進歩性欠如、明細書の記載不備、等)、 権利帰属に関する理由(冒認出願、共同出願違反)、 特許後の後発的理由(外国人の権利享有規定に対する後発的な違反、後発的な条約違反) |
特許庁での審理の結論 | 特許維持決定あるいは、 特許取消決定 | 棄却審決(無効審判請求を棄却する)あるいは、 無効審決(無効審判請求を認める) |
不服申立 | 特許維持決定に対しては不服申立不可(異議申立人は同一の証拠、同一の理由で特許無効審判請求が可能)、 特許取消決定に対して特許権者は知財高裁に決定取消訴訟の提起可能(被告は特許庁長官) | 棄却審決に対しては無効審判請求人、無効審決に対しては特許権者がそれぞれ知財高裁に審決取消訴訟の提起可能(前者の場合は特許権者が被告、後者の場合は無効審判請求人が被告) |
特許庁での審理の結論が確定したときの効果 | 特許維持決定:特許権は維持される 特許取消決定:特許権は最初から成立しなかったものとして取り扱われる | 棄却審決:特許権は維持される。棄却審決確定を受けた無効審判請求人は同一の無効理由で再度の特許無効審判を請求できない(一事不再理効) 無効審決:特許権は最初から成立しなかったものとして取り扱われる。後発的無効理由の場合は後発的無効理由に該当した時から消滅 |
特許庁が公表しているデータによれば、毎年約20万件程度の特許権が成立し、特許掲載公報発行後の6カ月間に限って提出が認められている特許異議申立の件数は年間1400件を超えています。特許無効審判は特許成立後何年経過してからでも請求可能なことを考えますと、特許無効審判請求件数は決して多くありません。
いたずらに紛争を発生させるのは望ましくありませんから、他社の特許権を発見した場合、特許権侵害にならないように技術的に回避する道を探る、技術的に回避できないならば実施許諾を申し込む等の対応を採るのが望ましいとされています。
特許権者から特許権侵害訴訟の提起を受けた際に、その侵害訴訟における対抗策の一つとして裁判所において「無効の抗弁」(特許は特許無効審判により無効にされるべきものと認められるから、原告である特許権者は、被告に対して権利行使することができない。特許法第104条の3)を行い、その一方で、特許庁において特許無効審判を請求するというのが一般的です。
特許無効審判請求は、このように、特許権者との間における具体的な紛争の場面で活用されることが多いものですので慎重な対応が必要で専門家である弁理士によく相談されるようお勧めします。
■ニューストピックス■
- 「レナウン」の社名が復活(オッジ・インターナショナル)
衣料品メーカーの「オッジ・インターナショナル」は、11月2日付で社名を「レナウン」に変更すると発表しました。知名度の高い社名に変更することで、企業ブランドを高め、成長につなげる狙いがあるということです。
http://www.oggi-inter.co.jp/news/4145/
レナウンは、1902年創業のアパレル業界の老舗で、高度成長期に百貨店とともに事業を拡大し、90年代には世界最大級の売上高を誇るアパレルメーカーとなりました。
しかし、主要販路だった百貨店の販売低迷やユニクロをはじめとする低価格帯のブランドの台頭により、業績が低迷し、2020年5月に経営破綻しました。破産手続きを終えた旧レナウンは、法人としては消滅しましたが、レナウンの「ダーバン」「アクアスキュータム」などの有名ブランドは、「オッジ・インターナショナル」に事業譲渡されました。
同社では、引き継いだ2つのブランドが主力事業に成長したことから、老舗ブランドである「レナウン」へ社名変更することで、認知度の向上とブランディングを目指すとしています。
- 人気ゲーム運営元を特許権侵害で提訴(セガ)
スマートフォン向けゲームなどを運営する「バンク・オブ・イノベーション」(BOI)は、ゲーム機器大手「セガ」から特許権侵害で訴えられたと発表しました。
BOIによると、人気ソーシャルゲーム「メメントモリ」と2023年にサービスを終了した「幻獣契約クリプトラクト」がセガの持つ5件の特許権を侵害しているとして提訴されました。セガ側はゲームプログラム差し止めのほか、損害賠償金10億円と損害遅延金を求めているということです。
両社は特許権の実施権許諾条件について協議を重ねてきましたが、合意に至らず、今回の提訴となりました。対象となるのは、特許第5930111号をはじめとする5件です。
BOIは、「当社サービスが当該特許権を侵害しているとの事実はないものと認識しており、訴訟の中で、当社の主張の正当性を明らかにする」としています。
- 電子マネー「PayPay」の決済音、音商標で出願
ソフトバンクグループの「PayPay(ペイペイ)」は、電子マネーの決済手続き時の「ペイペイ!」という音を音商標として出願しています(商願2024-030560)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/TR/JP-2023-002193/40/ja
音商標は、メロディー、音声、自然音などからなる商標のことで、聴覚で認識される商標のことです。商標は、文字や図形(ロゴ)からなるものだけでなく、音についても登録することができます。音商標は、2015年4月1日から登録が認められるようになった比較的新しい商標です。
決済音は、支払が完了したことを確認するための機能ですが、それ以外にも、「ユーザーに『支払った感』を与える効果」「ユーザーへのブランド告知効果」などさまざまな効果も考えられます。
電子マネーの決済音としては、イオンの電子マネー「WAON(わおん)」の決済音(犬の鳴き声ごえのイメージ)が2017年に音商標として登録されています(登録番号: 5984020号)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/TR/JP-2015-029881/40/ja
- 知的財産の取引適正化に向け下請法改正へ(公取委)
公正取引委員会と中小企業庁は、下請の中小企業が持つ図面や生産ノウハウなどの知的財産を、発注企業側が開示を強要したり、無償譲渡させたりする行為などが多いという実態調査を受け、近く下請法を改正する方針です。
https://www.jftc.go.jp/soshiki/kyotsukoukai/kenkyukai/kigyoutorihiki/kaisaijyokyo/index.html
日本商工会議所が実施した「知財の取引適正化に関する中小企業の現状・施策の認知度」によると、知財侵害行為を受けたことがある割合は11.9%と、約8社に1社が知財侵害を経験したと回答しています。
また、公取委が実施した「製造業者のノウハウ・知的財産権を対象とした優越的地位の濫用行為等に関する実態調査報告書」によると、「秘密保持契約・目的外使用禁止契約無しでの取引を強要される」「知的財産権の無償譲渡・無償ライセンス等を強要される」などの知財侵害行為が依然として多い実態が明らかになっています。
公取委は、こうした行為は、優越的地位の濫用にあたる可能性があるとして、詳しく実態調査する方針を示しました。これを受け、中小企業庁は、大企業と中小企業間の知的財産をめぐる取引の適正化に向け、来年の通常国会での下請法改正を視野に検討を進めています。
- 商標の審査着手状況(審査未着手案件)を公表(特許庁)
特許庁は、令和6年10月時点における商標登録出願の審査着手の見通し時期を公表しました。
https://www.jpo.go.jp/system/trademark/shinsa/status/cyakusyu.html
商標の審査結果が通知されるまでの期間は、区分によって異なりますが、概算で約7~10ヶ月とされます。案件ごとに審査のスケジュールを確認することができませんが、ご自身の案件の指定商品・役務で、大体の審査の着手時期を確認することができます。
権利の早期化を希望する場合、商標早期審査の活用を検討してください。
- 海外出願の権利化に要する費用を補助する「外国出願・審査請求・中間応答支援(海外権利化支援事業)」(特許庁)
特許庁のウェブサイトには「外国出願の権利化に要する費用を補助します」ということで「外国出願・審査請求・中間応答支援(海外権利化支援事業)」が紹介されています。
https://www.jpo.go.jp/support/chusho/kaigai-shien_new-business.html
「海外市場での販路開拓や円滑な営業展開、また模倣被害への対策には、進出先において特許権や商標権等を取得することが重要」であるとして、「外国での特許、実用新案、意匠又は商標の出願・権利化を予定している中小企業などに対し、一般社団法人発明推進協会を通じて、海外知財庁における権利化(①出願、②審査請求、③中間応答)に要する費用の1/2を助成」するものです。
補助金の申請は発明推進協会へ行います。補助金交付を受けることのできる種々の条件、申請方法などの詳細は発明推進協会の中小企業等海外展開支援事業補助金(令和6年度海外権利化支援事業)をご参照ください。
https://www.jiii.or.jp/kaigai-hojo/index.html
<【出願】にかかる費用補助>
・公募期間:2024年11月18日(月)~12月3日(火)
(本年度3回目の公募期間で、本年度はこれが最後になります。)
・発明推進協会への補助金申請時に既に日本国特許庁に対して特許、実用新案、意匠又は商標出願済みで、採択後に同内容の出願を優先権を主張して外国へ公募毎に指定する期限までに出願を行う予定の案件、等が助成対象になります。
・外国での特許、実用新案、意匠又は商標の出願・権利化を予定している中小企業、中小スタートアップ企業、小規模企業、大学等で(国際出願関係手数料に係る軽減・支援事業対象者)に対し、外国出願に要する費用の1/2が助成されます。
・発明推進協会に補助金申請し、採択決定後に発生した費用に限りますが、外国特許庁への出願料、国内・現地代理人費用、翻訳費用などが補助の対象で、補助率は1 / 2、上限額は1企業あたり:300万円、1案件あたり:特許 150万円、実用新案・意匠・商標 それぞれ60万円、冒認対策商標 30万円 (冒認対策商標とは、冒認出願の対策を目的とした商標出願)
なお、「国際出願関係手数料に係る軽減・支援事業対象者」は特許庁ウェブサイトで説明されています。
https://www.jpo.go.jp/system/patent/pct/tesuryo/pct_keigen_shinsei_202401.html#1
<【審査請求】にかかる費用補助>
・公募期間:2024年5月30日(木)~2025年2月7日(金)
・外国特許庁へ「審査請求」を予定している中小企業、中小スタートアップ企業、小規模企業、大学等(で国際出願関係手数料に係る軽減・支援事業対象者)に対し、外国特許庁での審査請求に要する費用の1/2が助成されるものです。
・令和5年度までに、特許庁の「外国出願補助金(中小企業等外国出願支援事業)」または「スタートアップで活用予定の海外出願支援事業(出願手続)」を利用して出願した「特許」の案件で、審査請求期間内であることが要求されます。
・発明推進協会に補助金申請し、採択決定後に発生した費用に限りますが、(1)外国特許庁への審査請求料(審査請求と同時に行う補正費用についても対象)、(2)(1)に要する国内代理人・現地代理人費用、(3)(1)に要する翻訳費用が補助対象経費になります。
・補助率は1 / 2で、上限額は、1手続(各国別)あたり50万円(1法人(又は1個人)当たりの上限額なし)。
<【中間応答】にかかる費用補助>
・公募期間:2024年5月30日(木)~2025年2月7日(金)
・外国特許庁へ特許出願を行った案件で、拒絶理由通知を受領し、今後、応答(すなわち、中間応答)を予定している中小企業、中小スタートアップ企業、小規模企業、大学等(で国際出願関係手数料に係る軽減・支援事業対象者)に対し、外国出願の中間応答に要する費用の1/2が助成されるものです。
・令和5年度までに、特許庁の「外国出願補助金(中小企業等外国出願支援事業)」または「スタートアップで活用予定の海外出願支援事業(出願手続)」を利用して出願した「特許」の案件で、外国特許庁から「新規性」、「進歩性」の指摘を受けた拒絶理由通知を受領し、応答期限内の対応が可能であることが要求されます。
・発明推進協会に補助金申請し、採択決定後に発生した費用に限りますが、(1)外国特許庁への中間応答費用、(2)(1)に要する国内代理人・現地代理人費用、(3)(1)に要する翻訳費用が補助対象経費になります。
・補助率は1 / 2で、上限額は、1手続(各国別)あたり50万円(1法人(又は1個人)当たりの上限額なし)。
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発行元: 外堀知的財産事務所
弁理士 前田 健一
〒102-0085 東京都千代田区六番町15番地2 鳳翔ビル3階
TEL:03-6265-6044
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