※世界特許出願件数が過去最高 外堀知的財産事務所 メールマガジン 2025年12月号
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━ 知財担当者のためのメルマガ ━━━━━━━━━━━━━━━
2025年12月号
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┃ ◎本号のコンテンツ◎
┃
┃ ☆知財講座☆
┃(23)実用新案登録に基づく特許出願(1)
┃ ~実用新案制度と特許制度との相違
┃
┃ ☆ニューストピックス☆
┃
┃ ■世界の特許出願件数が過去最高を更新(WIPO)
┃ ■海賊版サイトでの「ただ読み」被害8.5兆円(対策団体調査)
┃ ■商標の早期審査・早期審理ガイドライン改訂(特許庁)
┃ ■「木枯し紋次郎」の著作権侵害を認定(知財高裁)
┃ ■「知的財産スタートブック」を作成(特許庁)
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特許庁は、『経営課題に効く!中小企業のための支援施策ガイド「知的財産スタートブック」』を公表しました。
ガイドブックには、中小企業の経営者や知財担当者、自治体や支援機関の担当者が個社の課題や活動段階に応じた支援施策にたどり着くことができるよう、各施策の概要・対象者・支援の効果などがまとめられています。
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┃知┃財┃基┃礎┃講┃座┃
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(23)実用新案登録に基づく特許出願(1)
~実用新案制度と特許制度との相違
【質問】
特許ではなく実用新案登録で十分と考えて実用新案登録を受けたのですが、「実用新案権では権利行使が難しい」といわれました。この実用新案登録を特許に変更できないでしょうか?
【回答】
実用新案登録出願の状態から特許出願へ変更することは従来から認められています。現状では、実用新案登録に基づいて特許出願を行うことが可能になっています。今回は、実用新案登録に基づく特許出願を検討するようになる事情がなぜ発生するのか説明し、次号で、実用新案登録に基づいて特許出願を行う際の注意点を説明します。
<実用新案で保護される考案は発明として特許でも保護される>
特許法では、保護する対象を「発明」とし、「発明とは自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」と定義しています。
実用新案法では、保護する対象を「考案」とし、「考案とは自然法則を利用した技術的思想の創作」と定義しています。
なお、実用新案では、「考案」の中でも「物品の形状、構造又は組み合わせに係る考案」しか保護されないことになっています(実用新案法第1条)。このため、「材」、「剤」などの「物質」や、「方法」などは実用新案では保護されません。
上述したように、「発明」の定義に「高度のもの」という文言が含まれ、「物品の形状、構造又は組み合わせに係る考案」しか実用新案登録の対象にならない理由は、特許制度、実用新案登録制度が創設された明治時代に遡る歴史的経緯によります。
「自然法則を利用した技術的思想の創作」を保護することで産業の発達を図るべく、明治時代に、特許制度を創設した際、「物品に関する技術的な特徴などちょっとした工夫が産業上役立つことも多く、また、日常生活の便宜を増大することから、いわゆる小発明(考案)を保護するために」、特許制度と共に設けられたのが実用新案制度です。
なお、特許要件、登録要件としての進歩性(出願前に知られていた事項に基づいて当業者が簡単・容易に発明・考案できたものではない)のレベルに関しては、現状では、「発明」と「考案」との間に相違を設けない取り組みになっています。日本のように技術が進んでいる国で「自然法則を利用した技術的思想の創作」を保護する際に、「容易に創作できた」あるいは、「きわめて容易に創作できた」と二重の基準(ダブルスタンダード)で臨むことは好ましくないと考えられているからです。
上述したように、「自然法則を利用した技術的思想の創作」という点で、特許で保護される「発明」と、実用新案で保護される「考案」とは同じです。特許では保護される「物質」や「方法」などが実用新案では保護されないというだけなので、実用新案で保護の対象になる「考案」は、必ず、特許で保護される対象の「発明」になります。
<実用新案制度と特許制度との違い>
上述したように保護する対象に共通性がありますが、いわゆる小発明を簡易に保護するという実用新案制度の趣旨から、「物質」や「方法」などが実用新案では保護されないというだけでなく、両制度の間に大きな相違があります。
実用新案は小発明を簡易に保護するという観点から、権利存続期間が出願日から10年を越えないところ、特許権では、原則として、出願日から20年を越えない期間にわたって保護を受け得る等の相違が特許制度と実用新案制度との間に存在しています。この他に、両制度の間には、以下に説明する大きな相違が存在しています。
<無審査登録制度(実用新案法第14条)>
特許では特許出願人などから提出された審査請求により、特許庁審査官が審査を行って、新規性、進歩性、等の登録要件を満たしていると認められたものに対してのみ特許権が付与されます。これに対して、実用新案では新規性、進歩性などの登録要件を審査せずに実用新案権を付与する無審査登録制度が採用されています。
新規性、進歩性などの登録要件を審査することなしに実用新案権が付与される実用新案登録出願の流れは以下のようになっています。
2024年度知的財産権制度入門テキスト 出願から実用新案権取得までの流れ
https://www.jpo.go.jp/news/shinchaku/event/seminer/text/document/2024_nyumon/1_2_2.pdf
<実用新案技術評価制度(実用新案法第12条)>
実用新案権は、特許権と同じく、権利侵害者に対して差止請求(実用新案法第27条)や、損害賠償請求(民法第709条、実用新案法第29条)することのできる独占排他権です(実用新案法第16条)。
上述したように、新規性、進歩性、等の登録要件についての審査を受けることなしに付与されている実用新案権にこのような強い効力が認められていることから、実用新案権者には、権利行使にあたって、より高度な注意義務が課されます。実用新案技術評価書が作成される実用新案技術評価制度はこの目的で創設されています。
特許庁へ提出された請求に基づいて、審査官が、実用新案登録に係る考案の有効性(新規性、進歩性などの登録要件を具備しているものであるかどうか)について評価を行って作成し、請求人へ届けるものが実用新案技術評価書です。
特許庁の審査官が作成している実用新案技術評価書は、実用新案権の有効性に関する客観的な判断材料になります。
実用新案権者が「実用新案権侵害を行っている」と認める者に対して実用新案権侵害差止請求訴訟を提起する等の権利行使する場合には、無審査で付与されている実用新案権の濫用を防止し、第三者に不測の不利益を与えることを回避するという観点から、実用新案技術評価書を提示して警告した後でなければなりません(実用新案法第29条の2)。
「この規定に反し、実用新案技術評価書を提示せずに行った警告は、有効なものとは認められず、その状態で侵害訴訟を提起しても、直ちに訴えが却下されるわけではないが、評価書が提示されない状態のままでは、権利者の差止請求、損害賠償請求等は認容されないものと解される」とされています(工業所有権法逐条解説)。
<無過失賠償責任(実用新案法第29条の3)>
実用新案権者が権利行使(例えば「警告書」送付)した場合であって、権利行使を受けた側などが実用新案登録無効審判を請求し、特許庁の審理で実用新案登録が無効にされ、その審決が確定した場合には、実用新案権者は、権利行使を受けた側が被った損害を賠償しなければなりません(実用新案法第29条の3)。いわゆる、無過失賠償責任を負わなければならないという規定です。なお、実用新案権者が、「実用新案技術評価書」の評価(登録性を否定する旨の評価を除く。)に基づき権利を行使したときや、その他相当の注意をもって権利を行使したときは上述の無過失賠償責任を免れると考えられています。
特許庁審査官が審査を行った上で付与されている特許権に基づいて警告書送付、特許権侵害差止請求訴訟の提起などを特許権者が行う場合、このような無過失賠償責任を負う必要はありません。
<実用新案登録から特許出願への変更を希望することになる事情>
実用新案と特許との間では保護対象が共通していることから、従来から、いったん実用新案登録出願したものを、その出願が特許庁に係属している間に特許出願へ変更することが認められています。
しかし、無審査登録の実用新案では、実用新案登録出願については、出願料や1~3年分の登録料が納付されている等の方式的事項や、実用新案登録請求の範囲に記載されていて保護が求められている「考案」が、そもそも、実用新案登録の対象にしている「物品の形状、構造又は組み合わせに係る考案」であるか等の基礎的な事項についてのみ審査され、これらが満たされている実用新案登録出願に対しては、直ちに、登録が認められます。
このため、実用新案登録出願後2カ月程度で登録になって実用新案権が成立することが一般的です。
そこで、従来から認められている実用新案登録出願から特許出願への変更は、実用新案登録出願後2カ月程度の間しか認められないことになってしまいます。
無審査登録による簡易な保護で十分であると考えて実用新案登録出願し、登録を受けている場合であっても、実用新案登録後の技術動向の変化や、事業計画の変更に伴って、審査を経た安定性の高い権利を取得したいとなることがあり得ます。
特に、実用新案技術評価書は、特許出願の審査で審査官から通知される拒絶理由通知書のように、進歩性欠如、等の否定的な評価を受けた際に意見書・補正書提出によって反論し、再考を求めることで、拒絶理由解消=特許査定という肯定的評価に変えることができるものではありません。
警告書を送付する際に添付することが義務付けられている実用新案技術評価書が否定的な評価になるならば、実用新案権者は警告書送付すら躊躇せざるを得なくなります。
そこで、審査を経た安定性の高い権利を取得したいとなることがあります。このような場合が、実用新案登録を特許出願に変更したいという要望が上がるときになると思われます。
次号では、実用新案登録に基づいて特許出願を行う際の注意点を説明します。
■ニューストピックス■
- 世界の特許出願件数が過去最高を更新(WIPO)
世界知的所有権機関(WIPO)は、「世界知的財産指標報告書」を発表しました。
https://www.wipo.int/pressroom/en/articles/2025/article_0012.html
報告書によると、2024年の世界の特許出願件数は約372万件と前年より4.9%増え、過去最高を更新しました。中国やインドの出願件数が大幅に増加し、全体を押し上げました。
国別の出願件数では、中国が約180万件(前年比9.3%増)で世界1位を維持。次いで米国 (501,831件) 、日本 (419,132件) 、韓国 (295,722件) 、ドイツ (133,485件) が続きました。インドは、6年連続で2桁成長を達成し、2024年は19.1%増となりました。
技術分野では、「コンピューター技術」が最も多く、全体の13.2%を占めました。次いで多かったのは電気機器、計測技術、デジタル通信、医療技術でした。
24年の世界の商標出願総数は1523万件で前年比0.1%の微減。24年の世界の意匠出願件数は2.2%増の160万件となりました。
- 海賊版サイトでの「ただ読み」被害8.5兆円(対策団体調査)
出版社や通信事業者などでつくる海賊版対策団体「ABJ」は、インターネット上に日本の漫画や小説を無断掲載している海賊版サイトへのアクセスによる「ただ読み」の被害額が推計で年8・5兆円に上るとの調査結果を発表しました。
報告書によると、海賊版サイトのうち日本の出版物(漫画、小説など)を掲載している913サイトを対象に調査を実施。その結果、123か国・地域から計28億回のアクセスがあり、総滞在時間は7億時間に上りました。
30分間滞在するとコミックス(単行本)1冊分(500円)が読まれたとみなして試算しました。それによると、「ただ読み」の被害額は7048億円(14億冊分)と推計。年換算で8・5兆円に達し、昨年1年間の日本のコミック市場(販売額7043億円、出版科学研究所調べ)の12倍に相当するとしています。
- 商標の早期審査・早期審理ガイドライン改訂(特許庁)
特許庁は商標の早期審査・早期審理のガイドラインを改訂しました。改訂は令和7年10月1日以降の出願から適用されます。
https://www.jpo.go.jp/system/trademark/shinsa/soki/shohyo_souki_kaitei.html
2024年4月1日以降、「他人の氏名を含む商標」の登録要件が緩和され、一定の知名度を有する他人が存在せず、商標中の氏名と出願人との間に相当の関連性があり、かつ不正の目的が認められない場合には、他人の承諾を得なくても登録することができるようになりました。
「他人の氏名を含む商標」は、早期審査の対象外とされていましたが、今回、これらの出願についても早期審査の対象に追加されました。
令和7年10月1日以降の出願からは、他人の氏名を含む商標に係る出願も所定の要件を満たせば、早期審査の対象となります。
- 「木枯し紋次郎」の著作権侵害を認定(知財高裁)
時代小説「木枯し紋次郎」の主人公を模したキャラクターのイラストを駄菓子の容器に無断で描いたとして、原作者の遺族が菓子メーカーに損害賠償などを求めた訴訟の控訴審で、知財高裁は、請求を棄却した一審・東京地裁判決を取り消し、著作権侵害を認めて約5600万円の損害賠償などを命じました。
https://www.courts.go.jp/assets/hanrei/hanrei-pdf-92621.pdf

出典:令和5年(ワ)第70139号判決文
木枯し紋次郎は1971年に雑誌連載が開始され、翌1972年1月にテレビ化。後には映画化もされました。一方、問題となった駄菓子「紋次郎いか」は1972年6月に発売されました。
原告は主人公である紋次郎について、①三度笠をかぶり、②通常より長い道中合羽、③口に長い竹の楊枝をくわえ、④長脇差を携えた姿、という部分で特定する旨を主張。
一審・東京地裁は、「典型的な渡世人スタイルの表現は、歴史的にありふれたもので創作性がない」として請求を棄却しました。
これに対し、知財高裁は、「①〜④の4つの特徴すべてを備えた人物が登場するドラマ等が存在していたとは認められず、イラストはテレビ作品の紋次郎の画像に依拠し、その画像の表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ、具体的な表現に変更を加えて、新たに思想又は感情を創作的に表現したものであり、イラストに接する者がテレビ作品の紋次郎の画像に係る表現上の本質的な特徴を直接感得することができるから、イラストはテレビ作品の紋次郎の画像の翻案であると認められる」と判断。一審判決を取り消し、被告の著作権(翻案権)侵害を認定しました。
- 「知的財産スタートブック」を作成(特許庁)
特許庁は、『経営課題に効く!中小企業のための支援施策ガイド「知的財産スタートブック」』を公表しました。
https://www.jpo.go.jp/support/chusho/document/chusho_chizai_about2/startbook.pdf
ガイドブックには、中小企業の経営者や知財担当者、自治体や支援機関の担当者が個社の課題や活動段階に応じた支援施策にたどり着くことができるよう、各施策の概要・対象者・支援の効果などがまとめられています。
また、特許権、商標権、意匠権を取得するメリットなどが紹介されています。このほか、「社員のモチベーション」「新規事業の立ち上げ」「価格競争への対応」「海外展開」「資金調達」など、中小企業が抱える主要な経営課題に対し、解決事例と支援策などを紹介しています。
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発行元: 外堀知的財産事務所
弁理士・一級知的財産管理技能士 前田 健一
〒102-0085 東京都千代田区六番町15番地2 鳳翔ビル3階
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