※中小企業の特許出願件数が増加しました 外堀知的財産事務所 メールマガジン 2024年9月号

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━ 知財担当者のためのメルマガ ━━━━━━━━━━━━━━━
                       2024年9月号

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┃ ◎本号のコンテンツ◎
┃ 
┃ ☆知財講座☆
┃ (8)特許出願において審査結果を受け取る時期

┃ ☆ニューストピックス☆

┃ ■中小企業の特許出願件数が増加(特許行政年次報告書2024年版)
┃ ■知財取引ガイドラインを改正へ(中小企業庁)
┃ ■9月1日からPCT国際出願関係手数料が改定
┃ ◆PCT国際出願料金の支援制度
┃ ■東宝とバンダイナムコがキャラクターなど共同開発
┃ ■知財活動に取り組む中小企業の事例集を公開(特許庁)
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特許庁は、知的財産をめぐる国内外の動向などを取りまとめた「特許行政年次報告書2024年版」を公表しました。
報告書によると、中小企業の特許出願が、2009年の統計以降、初の年間4万件を超えました。これは中小経営においても知的財産戦略が重視されている状況を示すものといえます。

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┃知┃財┃基┃礎┃講┃座┃
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(8)特許出願において審査結果を受け取る時期

【質問】
特許出願した発明について特許権の成立が認められるのかどうか、特許庁での審査の結果を受け取ることができる時期はいつ頃ですか?
また、当社が希望するような時期に審査結果を受け取ることが可能でしょうか?

【回答】
審査請求を行った後、一般的には、10カ月程度で特許庁から審査の結果を受けとることができます。

<特許庁が受け付けている審査請求の数>
特許出願した発明について特許の付与を認めることができるかどうか特許庁が検討・判断する審査は、特許出願手続と別個に審査請求が行われた後に開始されます。
近年、日本国特許庁が受け付けている審査請求の数は毎年23万件程度です(特許行政年次報告書2024年版)。
審査請求は特許出願と同時に行うこともできますが、1日でも先を争って行った特許出願で特許請求している発明を改良したより良い発明を後に特許出願した等々の事情が生じることがある等々を考慮して、出願日から3年以内に審査請求することが許されています。
出願日から3年経過しても審査請求が行われない場合、先願の地位(特許法第39条)を確保する特許出願が行われたという事実、出願後1年6月経過した時点で出願内容が特許出願公開公報として特許庁ホームページ(J-Plat Pat)から世界中に公表されその後の特許出願で特許請求される発明に対する先行技術文献の地位を確保したという事実は残りますが、特許出願は消滅します。
その後に復活させて審査を受けるようにすることはできません。
特許庁が公表しているデータによれば、特許出願の中の75%程度が審査請求され、25%程度は審査請求することなしに消滅しているものと思われます。

<審査の結果を受け取れる時期>
審査請求を行っても次の日から直ちに審査が開始されるわけではありません。
特許庁審査官の手元にあるものから順に審査が進められていますので審査請求後、審査の順番が来るのを待つことになります。
特許庁が公表しているデータによれば、審査請求後、特許庁から審査の結果(First Official Action=FA)を受けとるまでの審査順番待ち期間は平均で9.4カ月です(特許行政年次報告書2024年版)。
技術分野により審査速度に相違がありますので、どの技術分野でもこの程度の期間で審査結果を受けとれるとは限りませんが、いちようの目安としては、審査請求後10カ月程度で特許庁の審査結果を受けとることができます。

1回目の審査結果が「特許を認めることができない」という拒絶理由通知である場合には60日以内に意見書、補正書を提出して反論し、審査官に再考を求めることができます。
この手続により拒絶理由が解消すれば「特許を認める」という「特許査定」が下されることになります。1回目の審査結果が拒絶理由通知で、意見書、補正書提出で拒絶理由解消して特許成立するならば、速ければ、審査請求から1年~1年半程度で特許成立します。

<早期審査>
特許庁は、一定の要件の下、出願人からの申請を受けて審査を通常に比べて早く行う早期審査制度を採用しています。
早期審査を申請した出願の平均審査順番待ち期間は、早期審査の申請から平均3か月以下となっており、通常の出願と比べて大幅に短縮されています。
早期審査の対象になる出願は(1)実施関連出願、(2)外国関連出願、(3)中小企業、個人、大学、公的研究機関等の出願、(4)グリーン関連出願などです。
ここで「中小企業」とは中小企業基本法等に定める中小企業のこととされており、例えば、製造業の特許出願人が、従業員数300人以下あるいは、資本金の額3億円以下のどちらかの条件を満たしていれば「中小企業の出願である」として早期審査を受けることができます。

特許出願後ただちに審査を受けて早期に特許成立させたい場合、特許出願と同時に審査請求し「早期審査の事情説明書」も提出すれば、出願後3カ月程度で審査結果を受け取り、1年以内に特許権成立させて、出願公開公報が発行されるより前に特許公報が発行されることがあります。

特許出願を行った発明についての事業化の進展などを勘案しながら、専門家である弁理士にご相談の上、審査請求を行う時期、早期審査請求を行うかどうか、等々をご検討ください。

■ニューストピックス■

●中小企業の特許出願件数が増加(特許行政年次報告書2024年版)

特許庁は、知的財産をめぐる国内外の動向などを取りまとめた「特許行政年次報告書2024年版」を公表しました。

https://www.jpo.go.jp/resources/report/nenji/2024/index.html

報告書によると、日本国特許庁への特許出願件数は、2020年以降、横ばい傾向でしたが、2023年は前年比3.6%増の300,133件となりました。意匠登録出願件数は31,747件、商標登録出願件数は164,061件でした。
日本国特許庁を受理官庁とした特許協力条約に基づく国際出願(PCT国際出願)の件数は、2023年は47,372件となり、依然として高い水準を維持しています。

また、国内中小企業の特許出願件数をみると、2023年は前年比約1.4%増の40,221件となり、09年の統計以降、初めて年間4万件を超えました。これは、特許などの知的財産を経営戦略上の重要な経営資源として位置づけ、積極的に活用している中小企業が増えている状況を示すものといえます。

一方、全体の特許出願件数のうち、大企業と中小企業の割合は、大企業が82.4%、中小企業が17.6%となっています。
中小企業庁発行の「中小企業白書2024」によると、2021年の日本の全企業数約338万社における大企業と中小企業の割合は、99.7%は中小企業で、大企業はわずかに0.3%です。企業数0.3%の大企業が、8割以上の特許を出願しているのが現状です。

●「知財取引ガイドライン」を改正へ(中小企業庁)

中小企業庁は、大企業が知的財産権上の責任を、中小企業に一方的に転嫁する行為(責任転嫁行為)を防止するため、「知的財産取引に関するガイドライン」を改正する方針です。

https://www.meti.go.jp/press/2024/07/20240731001/20240731001.html

中小企業庁では、「知的財産取引に関するガイドライン」を策定するとともに、知財Gメンによるヒアリング調査を実施していますが、このほど、知財Gメンによる調査の中で、発注者への納品物について、第三者との間に知財権上の紛争が発生した場合に、発注者が例外なく受注側の中小企業にその責任を転嫁できる可能性のある契約が締結されている事案を確認しました。  
中小企業庁は、対象となる発注者に対し、契約条項の見直し等を要請したうえで、他の事業者間においても類似の契約が発生し得ることを踏まえ、現行のガイドライン及び契約書ひな形を改正する方針です。
中小企業庁は、第三者の知財を侵害した場合、発注者から中小企業への「指示」は、口頭での指示や情報提供のような正式な書面によらない形式でも、発注側の責任を問えるよう、ガイドラインを改正する方針です。

●9月1日からPCT国際出願関係手数料が改定

2024年9月1日から、国際出願関係手数料が改定されます。
2024年9月以降に本手数料の納付をする場合は、手数料の額及び適用関係に注意する必要があります。

https://www.jpo.go.jp/system/patent/pct/tesuryo/pct_tesuukaitei.html

<PCT国際出願料金の支援制度>
2024年1月1日以降にされたPCT国際出願・国際予備審査請求から、中小企業については、手数料が一括して軽減されるようになっています。
2023年12月31日まで実施されていた料金支援制度の手続が簡素化されました。支援措置を受けるための要件及び料金負担割合には変更ありません。
2023年12月31日以前の日本語の国際出願に係る国際出願手数料、国際予備審査請求に係る取扱手数料については、中小企業は、国際出願促進交付金制度が利用できました。2024年1月1日以降は、同制度が廃止され、同日以降に行う国際出願、国際予備審査請求については、従来の国際出願促進交付金申請手続を行うことなしに、手続時に国際出願手数料又は取扱手数料の金額の1/2,1/3又は1/4に相当する金額を納付することでよくなっています。

制度の詳細は特許庁HPをご参照ください。

https://www.jpo.go.jp/system/patent/pct/tesuryo/pct_keigen_shinsei_202401.html

●東宝とバンダイナムコが新キャラクターなど共同開発

東宝は、バンダイナムコホールディングス(HD)と資本業務提携したと発表しました。両社で新たなキャラクターやコンテンツといった知的財産(IP)を共同開発し、国内外で展開する方針です。

https://contents.xj-storage.jp/xcontents/AS05040/04264691/376e/45e0/87e5/c26ea4a48fc2/140120240717550613.pdf

東宝は映画「ゴジラ」をはじめとした世界的なIPを保有し、映像作品の制作に強みがあります。一方、バンダイナムコHDは玩具やゲームなどを通じ、フィギュアやゲームなど、IPを活用した商品やサービスの展開を得意とし、国内外に販売拠点を持っています。
両社は互いの強みを生かし、既存のキャラクターから派生した商品展開ではなく、オリジナルのIPを共同開発する方針です。
東宝はバンダイナムコHDの発行済み株式総数の0.13%にあたる83万株、バンダイナムコHDも東宝の同0.25%にあたる46万株をそれぞれ取得しました。

●知的財産活動に取り組む中小企業の事例集を公開(特許庁)

特許庁は、知財活動に取り組む中小企業を紹介する「知財活動事例集~中小企業の舞台裏~」を公開しました。

https://www.jpo.go.jp/support/example/kigyou_jireii2024.html

事例集では、知財活動を「知財創出の仕組み」「見える化」「権利化」「侵害対策」「海外展開」など14種類に分類し、それぞれの事例を紹介しています。
業種や活動内容など多様な全国14社の中小企業について、その背景や考え方を紹介。また、特許や商標の権利化だけでなく、見逃しがちな自社の強みを発見・整理し、それを最適な手段で守り、事業活動に活用していく視点でも、まとめられています。


発行元: 外堀知的財産事務所
弁理士 前田 健一
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