※日本の海賊版被害5兆7千億円 外堀知的財産事務所 メールマガジン 2026年2月号
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2026年2月号
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┃ ◎本号のコンテンツ
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┃ ☆知財講座☆
┃(25)発明に利用されている自然法則
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┃ ☆ニューストピックス☆
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┃ ■オンライン発送制度の改正概要と主な留意事項
┃ ■BGM使用料を歌手にも分配、著作権法改正へ(文化庁)
┃ ■「スヌーピー」運営会社を子会社化(ソニーグループ)
┃ ■日本の海賊版被害、3年で3倍に(経済産業省)
┃ ■2025年度知的財産権制度入門テキストを公表(特許庁)
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特許庁がオンラインで発送する拒絶理由通知書等の特定通知について、本年4月1日以降、新ルールが導入されます。
オンライン発送制度の利用を希望する場合は、新たに「特定通知等を受ける旨の届出」を特許庁へ提出する必要があります。
今号では、オンライン発送制度の改正概要と留意事項を紹介します。
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┃知┃財┃基┃礎┃講┃座┃
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(25)発明に利用されている自然法則
【質問】
特許取得を希望する発明がどのようなメカニズム・機序によって発明の目的を達成できているのかを解明してからでないと特許出願を行うことができないのでしょうか?
【回答】
特許法において発明は「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度なもの」と定義されています(特許法第2条第1項)。そこで、完成させた発明がどのようなメカニズム・機序によって発明の目的を達成できているのかという、発明に利用されている自然法則を解明、認識するまで特許出願することはできないのではないか?というご質問になったものと思います。回答は、「自然法則を解明、認識していなくても特許出願はできます。」です。今回は、この点について説明します。
<特許法上の「発明」の定義における「自然法則」>
特許法第2条第1項の発明の定義における「自然法則」とは、自然界において経験によって見出された法則であるとされています。
例えば、水は高い所から低い所へ流れる、丸太は水に浮かぶ、というようなものです。
ニュートンの運動の法則、等、自然科学上、○○法則といわれているものは、当然、発明の定義における「自然法則」にあたります。このようなものに限られず、自然界において、経験上、所定の原因によって、所定の結果が生じると認識されている上述したような経験則も、発明の定義における「自然法則」に含まれます。
<特許法上の「発明」の定義における「自然法則の利用」>
特許法では、発明を「自然法則を利用した・・・」と定義していることから自然法則そのものは特許法上の発明ではなく、自然法則を利用したものが初めて特許法上の発明になります。
例えば、水車は、「水は高い所から低い所へ流れる」という自然法則を利用した発明になります。また、丸太を結束して構成した筏(イカダ)は、「丸太は水に浮かぶ」という自然法則を利用した発明になります。
<「自然法則の利用」がなぜ要求されるのか?>
「この法律は、発明の保護及び利用を図ることにより、発明を奨励し、もって産業の発達に寄与することを目的とする。」(特許法第1条)という法目的から、特許法で保護する発明には、実施可能性があり、常に、ある程度の確実性をもって同一の結果が反復され、発明者・特許出願人以外の第三者であっても、同じように、実現・再現できるものであることが要求されます。
これらの要請に応えることができなければ、産業の発達という法目的を達成できません。
この点、自然法則が利用されているならば、原因と結果との間には必ず因果関係が存在していますから、実施可能で、常に、ある程度の確実性をもって同一の結果が反復され、発明者・特許出願人以外の第三者であっても、同じように、実現・再現することができます。
<どの程度の再現確実性が要求されるか>
「自然法則の利用」という観点から、「常に、ある程度の確実性をもって同一の結果が反復され」ることが要求される、といっても、100%の確実性が、常に、要求されるわけではありません。
発明が開拓的、基本的なものである場合には、確実性、成功率は低いのが一般的であると考えられています。例えば、世界的発明とされている御木本幸吉氏の真珠養殖法の発明(特許第2670号(明治27年))では、当初、その成功率は1~2%程度(300個のうち数個のみ)であったといわれています。
確実性、成功率が低くても、特定の手段を採用することで、必ず、目的としている効果を現実に達成することができるならば、このような因果関係をもたらす自然法則の利用がなされているわけですから、特許法上の発明になります。
<自然法則を解明、認識してからでなければ特許出願できないか?>
研究活動において発明の根本になっている自然法則を解明し、認識することは非常に重要です。
しかし、特許の世界では、自然法則を利用しているがゆえに、実施可能で、常に、ある程度の確実性をもって同一の結果が反復され、発明者・特許出願人以外の第三者であっても、同じように、実現・再現できるものであれば十分です。
そこで、完成した発明に利用されている自然法則を解明、認識することまでは要求されません。特定の手段を採用することで、必ず、目的としている効果を現実に達成することができる、と、発明者が経験上認識できたもので十分です。
どのような理論によってこれが実現されているのかを発明者が解明、認識することなしに特許出願することが可能なのです。
<特定手段の採用で目的達成できる実施例が必要>
完成した発明に利用されている自然法則を解明、認識することまでは要求されませんが、実施可能で、常に、ある程度の確実性をもって同一の結果が反復され、発明者・特許出願人以外の第三者であっても、同じように、実現・再現できるためには、特許出願の際に発明を説明するべく提出する明細書に、特定の手段を採用することで発明の目的を達成できることを示す実施例を記載する必要があります。
特許請求している発明の実施可能性、実現可能性を立証する責任は発明者・特許出願人にあります。
そこで、明細書に実施例、等を記載していない、等の事情により、特許請求されている発明に採用されている手段によって発明の目的を達成できるのか不明の場合には、特許請求している発明が自然法則を利用したものであるかどうか等についての検討・判断を受けることなく、拒絶され、特許成立しないことがあり得ます。例えば、実施可能要件違反(特許法第36条第4項第1号 明細書は経済産業省令で定めるところにより、その発明の属する技術の分野における当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されていなければならない。)、サポート要件違反(特許法第36条第6項第1号 特許請求の範囲の記載は、特許を受けようとする発明が明細書に記載したものでなければならない。)等、明細書の記載要件が具備されていないとして拒絶されることがあります。
<特許出願後であっても自然法則の解明を目指すことが望ましい>
上述したように、発明がどのような機序・メカニズムによって成り立っているのかを解明、認識することなしに特許出願することは可能です。
この場合、特定の手段を採用することで、必ず、目的としている効果を現実に達成することができる、という発明者の認識が完全でなくても発明は成立し、特許出願して特許取得することが可能ということになります。
ところが、利用している自然法則についての発明者の認識が完全でない場合、特許請求すべき発明の範囲を正確に認識できていない状態で特許出願することが起こります。
例えば、目的とする技術的課題を解決するためには「構成要件Aと、構成要件Bと、構成要件Cとを備えていることが必須だ」と発明者が認識した場合、「構成要件Aと、構成要件Bと、構成要件Cとを備えている発明X。」として特許出願し、特許取得することになります。
ところが、目的とする技術的課題を解決するためには「構成要件Aと構成要件B」だけが備わっていれば十分で、「構成要件C」は付属的で、無くてもよいものであった、ということが、発明の機序・メカ
ニズムを把握せずに特許出願していた場合には起こり得ます。
このような場合、たとえ特許成立しても、第三者が、「構成要件C」を採用せずに「構成要件Aと構成要件B」だけで実施していれば特許権侵害になりません。
また、上述したように、実施例が必要だということで、実験を行い、実験で確認できた、例えば、「120℃~150℃の温度範囲で加熱する」ことを必須の構成にして特許出願し、特許権取得したが、その後、「150℃~170℃の温度範囲で加熱」しても同一の目的を達成できることが判明することがあります。このような場合、「160℃~170℃の温度範囲で加熱」して同一の目的を達成している第三者を特許権侵害であるとして排除することはできません。
そこで、上述したように、発明がどのような機序・メカニズムによって成り立っているのかを解明、認識することなしに特許出願することは可能ですが、そのような場合には、自然法則の解明を目指す研究、検討を特許出願後も続けることが望ましいです。特許出願後も継続していた研究、検討によって、最初の特許出願から一年以内に、より適切な発明の技術的範囲を把握できたならば、新たに特許出願を行う、あるいは、最初の特許出願に基づく優先権を主張した特許出願を行う、等により、より適切な技術的範囲での特許取得が可能になることがあります。
■ニューストピックス■
- オンライン発送制度の改正概要と留意事項(2026年4月1日施行)
2026年4月1日に施行される「不正競争防止法等の一部を改正する法律」に基づき、特許庁のオンライン発送制度が改正されます。
https://www.jpo.go.jp/system/laws/sesaku/tetsuzuki/online-hasso_minaoshi.html
本改正によりオンラインで発送される拒絶理由通知書等の特定通知について、申請人がインターネット出願ソフトを用いて受取可能となった日の翌日から、申請人によって受け取られることなく10日を経過した時に、申請人に到達したとみなす制度が導入されます。この規定によって到達したとみなすことを「経過到達」と呼びます。
経過到達した時点で発送日が確定するため、特定通知等の発送又は到達を起算点とする期間が始まることになります。また、経過到達となった特定通知等を書面で郵送(発送)することはありません。
<特定通知等を受ける旨の届出>
2026年4月1日以降、オンライン発送機能を利用したい場合には、新規に「特定通知等を受ける旨の届出」を特許庁へ提出する必要があります。
本届出は、令和7年12月末からインターネット出願ソフト(バージョン i6.10)の初回起動時から画面上の操作で提出可能となっています。現在、オンライン発送利用者であっても「特定通知等を受ける旨の届出」の提出をしない場合は、2026年4月1日以降全ての発送書類が書面で郵送(発送)されますのでご注意ください。
経過到達までの期間は、申請人がインターネット出願ソフトを用いて受取可能となった日の翌日から起算して「暦日単位」で算出します。「10日」の算出にあたっては、「開庁日」の1日を「暦日単位」で1日にあたるものとして取り扱います。
特許(登録)証も経過到達の対象となります。特定通知等を受ける旨の届出をした場合、紙の証書は郵送(発送)されませんので、書面(紙)の特許(登録)証が必要な場合、電子データを印刷する等してご利用ください。
また、再交付請求手続を行うことで、書面(紙)の特許(登録)証の再交付を受けることができます。
- BGM使用料を歌手にも分配、著作権法改正へ(文化庁)
文化庁は、飲食店や商業施設などで流すBGMの使用料を、作詞・作曲家だけではなく、歌手や演奏者にも分配するため、新たに「レコード演奏・伝達権」を導入する方針です。文化審議会に著作権法改正の素案を提示しました。
https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/chosakuken/seisaku/r07_04/pdf/94311501_04.pdf
現在、小売店や飲食店、商業施設がBGMを流す際、使用料は、日本音楽著作権協会(JASRAC)などの著作権管理団体が徴収し、作詞・作曲家に分配していますが、歌手や演奏者に使用料は支払われていません。著作権法改正で「レコード演奏・伝達権」が導入されれば、歌手や演奏家にも使用料が分配されることになります。
一方、支払う側には、新たにBGM使用料の負担が生じる可能性があります。文化庁は、使用料の具体額や徴収方法は今後検討し、小規模事業者の負担への配慮や国民への周知が必要として、3年程
度の準備期間を設けるよう求めています。
- 「スヌーピー」運営会社を子会社化(ソニーグループ)
ソニーグループは、スヌーピーで知られる人気漫画「ピーナッツ」の知的財産(IP)を保有するピーナッツHDの株式約41%を約710億円で取得すると発表しました。
https://www.sme.co.jp/pressrelease/news/detail/NEWS001925.html
ピーナッツHDは、世界的に知名度が高い「スヌーピー」や「チャーリー・ブラウン」で知られる「ピーナッツ」シリーズの権利を保有する会社。ソニーグループは、既存の持ち分約39%と合わせて計80%を保有し、ピーナッツHDはソニーグループの連結子会社となります。残りの20%の持分は原作者チャールズ・M・シュルツ氏の家族が引き続き保有します。
ソニーグループは、今後、グループのネットワークとキャラクタービジネスのノウハウを最大限活用して、「ピーナッツ」に関わるIPビジネスの拡大と、生誕75周年を迎えた「世界一有名なビーグル犬」のブランド力向上を図るとしています。
- 日本の海賊版被害、3年で3倍に(経済産業省)
経済産業省は、インターネット上の漫画やアニメ、ゲームなど日本発デジタルコンテンツの海賊版による2025年の被害額が、22年の前回調査の約3倍となる5兆7千億円に上るとの調査結果を公表しました。今回初めて調査した偽キャラクターグッズと合わせた被害総額は10兆4千億円に達しました。
https://www.meti.go.jp/press/2025/01/20260126001/20260126001.html
被害額の内訳をみると、アニメなどの映像が2.5倍の2兆3千億円、ゲームは5倍の5千億円、音楽が3倍の3千億円と、いずれも大幅に増加しました。初調査したフィギュアやプラモデルなどのグッズは4兆7千億円に上っています。
経産省によると、漫画の被害はベトナムが最も多く、グッズ関連は中国企業による海賊版の被害が目立つとしています。
日本のコンテンツ産業は、世界で評価が高く、輸出の増加が見込まれる成長産業であることから、経産省は海賊版対策の強化を進めています。
- 2025年度知的財産権制度入門テキストを公表(特許庁)
特許庁は「2025年度知的財産権制度入門テキスト」を公開しました。
https://www.jpo.go.jp/news/shinchaku/event/seminer/text/2025_nyumon.html
この入門テキストには特許、実用新案、意匠、商標の概要だけではなく、不正競争防止法、著作権、育成者権、地理的表示保護などについても解説されています。
このほか、出願書類の様式や地域の知財総合支援サービス窓口なども掲載されています。
発行元: 外堀知的財産事務所
一級知的財産管理技能士・弁理士 前田 健一
〒102-0085 東京都千代田区六番町15番地2鳳翔ビル3階
TEL:03-6265-6044
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