外堀知的財産事務所 メールマガジン 2024年5月号

外堀知的財産事務所メールマガジンを発行しましたので、ブログへ転記いたします。

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◇◆◇ 外堀知的財産事務所 メールマガジン ◇◆◇

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━ 知財担当者のためのメルマガ ━━━━━━━━━━━━━━━

                       2024年5月号

 

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┃ ◎本号のコンテンツ◎

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┃ ☆知財講座☆

┃(4)発明の新規性喪失の例外規定

┃ ☆ニューストピックス☆

┃ ■「特許庁ステータスレポート2024」を公表(特許庁)

┃ ■営業秘密の侵害、過去2番目に多い摘発(警察庁)

┃ ■米グーグルに行政処分、広告配信制限の疑い(公取委)

┃ ■中国の「商標ブローカー」に勝訴(美容機器のMTG)

┃ ■「事例から学ぶ 商標活用ガイド2024」を作成(特許庁)

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「特許庁ステータスレポート2024」が公表されました。ステータスレポートは、特許庁が最新の知的財産権 (特許、実用新案、意匠、商標) の出願、審査、訴訟などに関する統計情報を取りまとめた年次報告書です。

今号では、ステータスレポートの中から2023年の特許・意匠・商標の出願状況と審査期間を紹介します。

 

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┃知┃財┃基┃礎┃講┃座┃

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(4)発明の新規性喪失の例外規定

 

【質問】

展示会で当社の新製品を紹介したところ、引き合いが多く来ています。実際の販売が始まる前に特許出願したいのですが、既に展示会に出展して社外の人に見せているので、これからでは特許出願できないのでしょうか?

 

【回答】

特許出願を行う前に発明品を展示会に出展していた場合でも出展の日から1年以内に特許出願を行うことで特許取得可能になることがあります。これを「新規性喪失の例外」といいます。

今回はこの新規性喪失の例外について説明します。

 

■特許出願前に新しさを失うと特許取得できない■

どこの国の特許制度でも、特許出願より前に、秘密を守る義務を有しない人に、知られた発明は、特許を受けることができないのが原則です。既に世の中の人に知られてしまった発明に、その後の特許出願によって特許権という独占排他権を与えるのは、世の中に混乱を与え、産業の発達に役立たないと考えられるからです。

 

■特定の条件が満たされると例外扱いを受け得る■

しかし、特許庁長官が指定している学会等で論文発表したり、刊行物への発表を行うことなどによって自らの発明を公開した後に、その発明について特許出願をしても一切特許を受けることができないとすると、発明者にとって酷で、産業発達への寄与という特許法の趣旨にもそぐわないことがあると考えられます。

 

そこで、従来から、所定の条件の下で発明を公開した後に、所定の条件を守って特許出願した場合には、その公開によっては、その発明の新規性は喪失していないものとして例外的に取り扱うようにしています。これを「発明の新規性喪失の例外」といいます。

 

現在では、集会・セミナー等(特許庁長官の指定のない学会等)で公開された発明、テレビ・ラジオ等で公開された発明、販売によって公開された発明のように、特許を受ける権利を有する者の行為に起因して公開された発明についても新規性喪失の例外規定の適用を受けることができるようになっています。

 

■新規性喪失の例外が認められる条件■

新規性喪失の例外適用を受けるためには次の3つの手続が必要です。

<1.新規性喪失行為後1年以内に特許出願を行う>

特許を受ける権利を有する者(例えば、自分が完成させた発明についての特許を受ける権利を他人に譲渡していない時点の発明者や、発明者から発明についての特許を受ける権利を譲り受けている会社など)が、インターネットでの発表、展示会への出品、販売、新聞・テレビ・ラジオでの発表などを行うことによって、発明が、秘密を守る義務を有していない人に知られてしまった日から1年以内に特許出願を行う必要があります。

<2.特許出願と同時に新規性喪失例外適用申請する>

特許出願と同時に「新規性喪失の例外適用を受けたい旨」の申請を行う必要があります。

<3.特許出願後30日以内に証明書を提出する>

その特許出願の日から30日以内に新規性を喪失した公開の事実を証明する書面を特許庁へ提出する必要があります。

現状では、「証明する書面」は、特許出願人=特許を受ける権利を有する者のみで作成することができ、また、捺印は不要になっています。

詳しくは「平成30年改正法対応 発明の新規性喪失の例外規定についてのQ&A集 平成30年改正法対応 (令和6年1月 特許庁)」をご参照ください。

https://www.jpo.go.jp/system/laws/rule/guideline/patent/document/hatumei_reigai/h30_qanda.pdf

 

■新規性喪失の例外であって先願の例外ではない■

日本の特許制度では、同一の発明について複数の特許出願が競合した場合には、最も先の特許出願に特許権が与えられることになっています(先願主義)。

発明の新規性喪失の例外規定は、発明者などが特許出願を行う前にその発明を公表してしまった場合に、その日から1年以内に特許出願が行われる、等の条件が満たされるときに限って、その特許出願に係る発明の特許性(新規性、進歩性)を判断するときに、当該公表によっては新規性を失っていなかったものとする取り扱いでしかありません。同一の発明について複数の特許出願が競合した場合に最も先の特許出願に特許権が与えられるという先願主義の例外規定ではありません。

 

■外国への特許出願には例外適用されない■

新規性喪失の例外規定については各国ごとに取り扱いが相違しています。インターネットでの発表、一般的な展示会への出品、販売、新聞・テレビ・ラジオでの発表などに関しては新規性喪失の例外が認められない国の方が多数です。

例えば、日本では新規性喪失の例外が認められて特許取得できたが、中国では、日本での新規性喪失行為(例えば、一般的な展示会への出品、販売)によって既に新規性を失った発明であるとして拒絶され、特許が認められません。

したがって、海外でも販売する製品であって、海外での特許取得も検討しなければならないものについては、原則通り、世の中の人に知られてしまう前に日本で特許出願を行うという注意が必要です。

 

<弁理士によく相談されることをお勧めします>

新規性喪失行為を行ってからでも1年以内であれば特許出願可能であり、「証明する書面」を特許出願人のみで準備できるようになっていますが、あくまでも、新規性喪失の例外は、公開する前に特許出願を行うべきという原則に対する例外です。慎重、かつ適切に対応しませんと新規性喪失の例外適用を受けられないことがあります。

また、外国への特許出願を行う場合、日本特許庁では「新規性喪失の例外」と認めてもらえる発明公開行為が、外国の特許庁では認めてもらえないことがあります。

そこで、このような事情を熟知している弁理士に事前に十分に相談されることをお勧めします。

 

■ニューストピックス■

 

●「特許庁ステータスレポート2024」を公表(特許庁)

 

特許庁は、最新の統計情報や知財の動向などを記載した「特許庁ステータスレポート2024」を公表しました。

https://www.jpo.go.jp/resources/report/statusreport/2024/matome.html

 

ステータスレポートは、特許庁が知的財産権 (特許、実用新案、意匠、商標) の出願、審査、訴訟などに関する統計情報などを取りまとめた年次報告書です。今回は、この中から特許・意匠・商標の出願状況と審査期間を紹介します。

 

<特許出願件数が3.7%の大幅増>

2023年の特許出願件数は300,133件、意匠出願件数は31,747件、商標出願件数は164,061件でした。

 

特許庁が受け付ける特許出願件数が30万件を越えるのは2019年以来4年ぶりになります。2019年の特許出願件数は307,969件で、以降、2021年の289,200件まで漸減し、2022年に289,530件と前年から微増していました。

2020年、2021年はコロナ禍という事情がありました。30万件台への回復は、コロナ禍の前にようやく戻ったといえます。

2005年に413,006件であった特許出願件数はその後多少の増減を繰り返しながら一貫して減少してきました。2023年の特許出願件数300,133件は前年比3.7%増で、対前年比で大幅な増加になります。

また、中小企業の特許出願件数をみると、レポートには2022年の実績までしか記載されていませんが、2022年の中小企業の特許出願件数は、39,648件で、前年の37,875件より1,773件増加しており、こうした傾向がどのようになるのか注目されます。

 

<一次審査通知 (First Action) までの期間 (FA期間) と権利化までの期間>

特許の2023年のFA期間は平均10.0か月。権利化までの期間は平均14.7月。

商標の2023年のFA期間は平均 5.4か月。権利化までの期間は平均6.9か月。

意匠の2023年のFA期間は平均 6.0か月。権利化までの期間は平均7.0か月。

 

●営業秘密の侵害、過去2番目に多い摘発(警察庁)

 

警察庁は、「令和5年における生活経済事犯の検挙状況等」を発表しました。

https://www.npa.go.jp/news/release/2024/20240404001.html

 

それによると、2023年に全国の警察が受理した企業情報の持ち出しなど営業秘密侵害に関する相談件数は前年比19件増の78件で、統計を取り始めた13年以降で最多となりました。また、営業秘密侵害事件の摘発件数は26件で、最多だった22年に次いで2番目に多い摘発となりました。

警察庁は、転職など人材の流動化が進んでいることや営業秘密に対する企業側の意識の高まりなどから、摘発・相談件数が高水準になっているとみています。

 

<改正不正競争防止法による営業秘密保護の強化>

本年4月に施行された改正不正競争防止法では、営業秘密の保護が強化されました。

営業秘密を使用された被害企業が損害賠償請求を行う場合、被害側にとって、侵害者(被告)が営業秘密を実際に使用していることを立証するのは非常に困難です。

そこで、改正不正競争防止法では、営業秘密を使用された被害側が営業秘密を不正に取得されたこと、そして、その秘密を使って生産できる製品を相手企業が作っているという2点を立証できれば、損害賠償を請求できるようになりました。

雇用の流動化の状況をふまえ、改正法では、営業秘密にアクセス権限のある者(元従業員、業務委託先等)や営業秘密が記録された媒体等を許可なく複製等した場合、警告書が届いたことにより不正な経緯を事後的に知ったにもかかわらず記録媒体を削除等しなかった場合なども不正競争防止法の違反行為に該当すると規定されました。

 

●米グーグルに行政処分、広告配信制限の疑い(公取委)

 

公正取引委員会は、米グーグルが「検索連動型」と呼ばれるインターネット広告の配信事業で、競合するLINEヤフーの事業を不当に制限した疑いがあるとして、独占禁止法に基づき行政処分を科したと発表しました。

https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2024/apr/240422_digijyo.html


「検索連動型」のインターネット広告は、検索エンジンに打ち込まれたキーワードに関連した広告が、サイトなどに自動的に表示されるサービスで、米グーグルが日本国内でも圧倒的なシェアを持っています。LINEヤフーは2010年以降、米グーグルから技術提供を受ける形で、サービスを展開しています。

公取委によりますと、技術面や国内シェアで優越的な立場にある米グーグルは、2015年9月2日から2022年10月31日までの約7年間、LINEヤフー側への技術提供を制限。この結果、LINEヤフー側はポータルサイトへ検索連動型広告を配信することが困難になったとしています。公取委は、こうした行為は独禁法上問題となる恐れがあるとして、2022年から審査を行ってきました。

米グーグルは公取委に対して事実関係を認めたうえで、改善計画である「確約計画」を提出。公取委がこの計画を認定したことにより、重い行政処分である排除措置命令や課徴金納付命令などは免除されました。

 

●中国の「商標ブローカー」に勝訴(美容機器のMTG)

 

美容・健康関連機器などの販売を展開するMTGが、中国の商標ブローカーを相手取り不正競争防止法違反で訴えていた裁判において、中国現地の裁判所が不競法違反などを認める判決を下したと発表しました。

https://www.mtg.gr.jp/news/detail/2024/03/article_2252.html

MTGによると、判決では、中国の「商標ブローカー」と呼ばれる企業集団が、他人の商標を営利目的で多数出願し、高額での買い取りを要求する「悪意の商標出願」について、不競法違反を認め、企業集団が保有していた「ReFa」などの商標の取り消しを命じるとともに、65万元(約1,385万円)の賠償金の支払いを命じました。

商標を先取り登録する行為により、MTGは中国で「ReFa」のブランドを自由に使えないなどの事業上の阻害を受けていたことから、MTGは商標権の無効審判手続などを起こして商標権の取り戻しを進めていました。

 

●「事例から学ぶ 商標活用ガイド2024」を作成(特許庁)

 

特許庁はこのほど、商標・商標権の効果や活用事例、商標権取得までの流れや出願手続きなどをまとめた「事例から学ぶ 商標活用ガイド~ビジネスやるなら、商標だ!」を作成、公表しました。

https://www.jpo.go.jp/support/example/document/trademark_guide2024/guide01.pdf

 

2019年に作成したガイドを5年ぶりに刷新したもので、ビジネスにおける活用方法や権利化に関するメリット、商標を取っていなかったために起きた失敗なども実際の事例を通じて分かりやすく紹介しています。

ガイドでは、商標・商標権の活用事例のほか、失敗事例なども紹介。失敗事例では、他社による先取りや商標権の失効、商標権の内容確認の未実施など、国内・海外で実際に起きた失敗事例を取り上げるとともに、トラブル回避に向けたアドバイスも掲載しています。

 

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発行元: 外堀知的財産事務所

弁理士 前田 健一

〒102-0085 東京都千代田区六番町15番地2

鳳翔ビル3階

TEL:03-6265-6044

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