※知財侵害物品、輸入差し止め件数過去最多 外堀知的財産事務所 メールマガジン 2025年4月号

外堀知的財産事務所メールマガジンを発行しましたので、ブログへ転記いたします。

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◇◆◇ 外堀知的財産事務所 メールマガジン ◇◆◇

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━ 知財担当者のためのメルマガ ━━━━━━━━━━━━━━━

                       2025年4月号

 

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┃ ◎本号のコンテンツ◎

┃ 

┃ ☆知財講座☆

┃(15)進歩性欠如を指摘する拒絶理由への対応

┃ ☆ニューストピックス☆

┃ ■海外サーバでも日本の特許権保護、ドワンゴの勝訴確定(最高裁)

┃ ■知財侵害物品、輸入差し止め件数が過去最多(財務省関税局)

┃ ■AI技術の発展と特許制度、今後の対応で論点示す(特許庁)

┃ ■音楽教室の著作権使用料で合意(日本音楽著作権協会)

┃ ■代理人の宣誓により印鑑証明書の提出が原則省略可能 (特許庁)

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動画投稿サイト「ニコニコ動画」を運営するドワンゴが、米国のFC2を訴えた訴訟の上告審で、最高裁は、特許の効力が国内に限定される「属地主義」の原則をめぐり、国境を超えるオンラインサービスに関して、「実質的に国内のサービスと評価できれば特許侵害に当たる」との判断を示しました。

海外にサーバを置くサービスの特許権侵害を最高裁判所が認めたのは初めてです。

 

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┃知┃財┃基┃礎┃講┃座┃

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(15)進歩性欠如を指摘する拒絶理由への対応

 

【質問】

 特許出願について特許庁で審査を受けたところ、拒絶理由に引用された文献(先行技術文献)に記載されている発明に基づいて容易に発明できるものであるから特許を認めることができないという拒絶理由を受けました。反論して審査官に再考を求めることができるということなのですが、どのように反論を準備すればよいでしょうか?

 

【回答】

 進歩性が欠如しているという拒絶理由を受けた場合に、審査官に再考を求めるべく提出する意見書、手続補正書の内容をどのように準備するか、一般的な例を紹介します。

 

<進歩性欠如を指摘する拒絶理由の一般的な形式>

 進歩性欠如の拒絶理由通知は、一般的に、次のような構成になります。

 審査を受けている本件特許出願(以下「本願」といいます)の特許請求の範囲の各請求項に記載されている発明(以下「本願発明」といいます)と対比する発明(引用発明)が記載されている先行技術文献(第一引用例)の指摘。

 第一引用例記載の発明(引用発明)と本願発明との間に存在していると審査官が認定する一致点と相違点の指摘。

 上述した相違点が記載されていると審査官が認定する他の先行技術文献(第二引用例)の指摘。

 本願発明の技術分野では第一引用例に第二引用例を組み合わせることが容易であるとの指摘。

 第一引用例記載の発明に第二引用例記載の発明を組み合わせると前述した相違点が解消されて本願発明に容易に想到することができ、本願発明は進歩性が欠如している、という指摘。

 

<特許請求している発明の確認>

 拒絶理由通知書を受けたときには、もう一度、本願の明細書、図面を読み直して、本願発明の内容を確認することをお勧めします。

 いきなり第一引用例、第二引用例を検討し、本願発明と相違している点はどこであるかを探したり、第一引用例、第二引用例に記載されている発明内容を前提とした上で、第一引用例、第二引用例記載の発明と異なるように本願発明の内容を考えるのは望ましくありません。

 あくまでも特許取得を目指すのは本願で審査を受けている本願発明です。これがどのようなものであるか、本願の明細書、図面の記載内容に立ち返って確認した上で拒絶理由の指摘を検討するのがよいです。

 

<引用文献記載の発明の確認>

 第一引用例の内容を検討します。本願発明と一致しているところはどのような内容であるかという観点から検討します。

 本願発明と対比して第一引用例にどのような発明(引用発明)が記載されているか、本願発明との間の一致点として拒絶理由通知書で指摘されているのが一般的です。しかし、拒絶理由通知書の指摘が正しいとは限りません。

 本願発明と相違しているところはどこか?という観点から、第一引用例の内容を検討するのではなく、第一引用例に記載されている発明であって、本願発明と一致しているところはどのようなところであるか、という観点から検討します。

 あくまでも特許取得を目指すのは本願で審査を受けている本願発明ですから、本願発明から見て、第一引用例には本願発明のどの部分と一致している発明が記載されているか、という観点で、本願発明と第一引用例記載の発明との間の一致点を確認します。

 

<相違点の確認>

 上述した観点で本願発明と第一引用例記載の発明との間の一致点を確認した後、再度、本願の明細書、図面に立ち返り、第一引用例に記載されている発明であって本願発明と一致している部分以外のところ、すなわち、本願発明が、第一引用例記載の発明と相違している点を確認します。

 あくまでも特許取得を目指すのは本願で審査を受けている本願発明です。上述した観点で確認した本願発明と第一引用例記載の発明との間の一致点以外のところ、すなわち、本願発明が第一引用例記載の発明と相違している点を、本願の明細書、図面に立ち返って、確認します。

 この際、相違点が明確になるように本願発明の記載内容を、出願時の明細書・図面の記載内容に基づいて補正する必要も検討します。補正することで、第一引用例に記載されている発明との相違点を明確にすることができれば、「進歩性欠如」という拒絶理由の指摘を解消できる可能性が高まります。

 

<第二引用例の発明内容の確認>

 第二引用例に記載されている発明内容を確認します。拒絶理由通知書では、審査官が認定した本願発明と第一引用例記載の発明との間の相違点に対応する発明が第二引用例に記載されていると指摘されるのが一般的です。

 しかし、上述した観点で本願発明と第一引用例記載の発明との間の一致点を確認した後、こうして確認できた本願発明と第一引用例記載の発明との間の一致点以外のところ、すなわち、本願発明が第一引用例記載の発明と相違している点を本願の明細書、図面の記載に基づいて確認しています。そこで、この検討で確認した、本願発明と第一引用例記載の発明との間の相違点が第二引用例に記載されているかどうか検討します。

 本願発明と第一引用例記載の発明との間の相違点が第二引用例に記載されていないならば、拒絶理由通知書で指摘されたように、たとえ、第一引用例記載の発明に、第二引用例記載の発明内容を組み合わせることができても、本願発明には、容易に想到できないことになります。この点を意見書で主張できます。

 

<第二引用例を第一引用例に組み合わせる論理付け>

 本願発明と第一引用例記載の発明との間の相違点が第二引用例に記載されていると認められる場合であっても、以下のような事情などがある場合には、進歩性欠如という拒絶理由通知書の指摘(第一引用例記載の発明に第二引用例記載の発明を組み合わせることで本願発明に容易に想到できる)は妥当でないとして意見書で主張することができます。

 第一引用例記載の発明が解決しようとしている課題と、第二引用例記載の発明が解決しようとしている課題とが相違している。⇒第一引用例記載の発明が目指している方向と、第二引用例記載の発明が目指している方向とが相違しているので、第二引用例を第一引用例に組み合わせる契機、起因が存在しない。

 第一引用例の記載の中に、第二引用例記載の発明を第一引用例記載の発明に組み合わせるきっかけになるような記載が存在していない。第二引用例の記載の中に、第二引用例記載の発明を第一引用例記載の発明に組み合わせるきっかけになるような記載が存在していない。⇒両者を組み合わせる契機、起因となる記載が第一引用例、第二引用例の中に無いので、第二引引用例を第一引用例に組み合わせる契機、起因が存在しない。

 第二引用例記載の発明を第一引用例記載の発明に組み合わせると、第一引用例記載の発明の目的が達成できなくなる等の事情がある。⇒第二引用例記載の発明を第一引用例記載の発明に組み合わせることを阻害する事情が存在している。

 

<相違点の存在による本願発明特有の効果の確認>

 上述したようにして本願発明と第一引用例記載の発明との間の相違点を確認しています。この相違点が存在することによって発揮される本願発明特有の機能・作用・効果を本願の明細書、図面の記載の中から把握します。

 相違点が存在することによって発揮される本願発明特有の機能・作用・効果が存在するならば、本願発明に進歩性が存在する、すなわち、第一引用例、第二引用例の組み合わせによって本願発明に容易に想到することができたとする論理付けは成立しない、という主張の根拠になります。

 相違点の存在によって発揮される本願発明特有の効果が第一引用例、第二引用例記載の発明によって発揮される効果とは異質の効果である、あるいは同質の効果であるが際立って優れた効果である場合には、そのような事情を説明して「第一引用例、第二引用例の組み合わせによって本願発明に容易に想到することができたとする論理付けは成立せず、本願発明は第一引用例、第二引用例記載の発明に対して進歩性を有する」と意見書で主張することができます。

 

■ニューストピックス■

 

  • 海外サーバでも日本の特許権保護、ドワンゴの勝訴確定(最高裁)

 日本国特許第6526304号(発明の名称:コメント配信システム)を所有して動画配信サービス「ニコニコ動画」を運営するドワンゴが、動画投稿サイトを運営する米国のFC2に対して、特許権に基づいて配信差し止めや損害賠償を求めた訴訟の上告審判決で、最高裁は、FC2側の上告を棄却しました。これにより、FC2側の特許権侵害を認め、賠償や配信差し止めを命じたドワンゴ側勝訴の2審・知財高裁判決が確定しました。

 

https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/839/093839_hanrei.pdf

 

 ドワンゴ特許は、動画及び動画に対してユーザが書き込んだコメントを表示する端末装置と、当該端末装置に当該動画や当該コメントに係る情報を送信するサーバとをネットワークを介して接続したシステムに関するもので、動画上に表示されるコメント同士が重ならないように調整するなどの処理を行い、コメントを利用したコミュニケーションにおける娯楽性の向上を図るものです。

 FC2側は、米国内で、ウェブサーバ、コメント配信用サーバ及び動画配信用サーバを設置管理し、ウェブサーバから、インターネットを通じ、ユーザが使用する我が国所在の端末に対し、HTMLファイル及びプログラムを格納したファイル(JavaScriptファイルなど)を配信していました(本件配信)。

 我が国の領域外に所在するサーバと我が国領域内に所在する端末とを含むシステムを構築するFC2側の行為が我が国の特許権を侵害するかが問題になっていました。

 

 最高裁は、「我が国の特許権の効力は、我が国の領域内においてのみ認められるが、電気通信回線を通じた国境を越える情報の流通等が極めて容易となった現代において、サーバと端末とを含むシステムについて、当該システムを構築するための行為の一部が電気通信回線を通じて我が国の領域外からされ、また、当該システムの構成の一部であるサーバが我が国の領域外に所在する場合に、我が国の領域外の行為や構成を含むからといって、常に我が国の特許権の効力が及ばないとすれば、特許権者に業として特許発明の実施をする権利を専有させるなどし、発明の保護、奨励を通じて産業の発達に寄与するという特許法の目的に沿わない。そうすると、そのような場合であっても、システムを構築するための行為やそれによって構築されるシステムを全体としてみて、当該行為が実質的に我が国の領域内におけるものに当たると評価されるときは、これに我が国の特許権の効力が及ぶと解することを妨げる理由はないというべきである。」としました。

 

 また、サーバの所在地が我が国の領域外にあることに関して、「本件配信による本件システムの構築は、我が国で本件各サービスを提供する際の情報処理の過程としてされ、我が国所在の端末を含む本件システムを構成した上で、我が国所在の端末で本件各発明の効果を当然に奏させるようにするものであり、当該効果が奏されることとの関係において、前記サーバの所在地が我が国の領域外にあることに特段の意味はないといえる。」としました。

 

 海外にサーバを置いて提供されるサービスの特許権侵害を最高裁判所が認めたのは初めてです。

 

  • 知財侵害物品、輸入差し止めが過去最多(財務省関税局)

財務省は、2024年に全国の税関が知的財産権を侵害する偽ブランド品などの輸入を差し止めた件数が3万3019件で、過去最多を更新したと発表しました。

 

https://www.mof.go.jp/policy/customs_tariff/trade/safe_society/chiteki/cy2024/index.html

 

財務省関税局によると、輸入差し止め件数は、前年比4.3%増となり、過去最多を更新しました。中国からの差し止め件数が全体の8割を占めています。

権利別でみると、偽ブランド品などの商標権侵害物品が3万1212件(構成比93.6%、2.5%増)で、引き続き全体の約9割を占め、次いで偽キャラクターグッズなどの著作権侵害物品が1380件(構成比4.1%、59.9%増)でした。

財務省は、通販サイトを利用した小口取引が増加する中、2022年10月の法改正で販売目的に限らず、個人使用のために輸入した偽ブランド品なども税関での没収が可能となったことが、差し止め件数の増加につながったとしています。

 

  • AI技術の発展と特許制度、今後の対応で論点示す(特許庁)

特許庁の特許制度小委員会は、AI技術の発達を踏まえた特許制度の今後の対応をめぐり論点を示しました。

 

https://www.jpo.go.jp/resources/shingikai/sangyo-kouzou/shousai/tokkyo_shoi/document/52-shiryou/01.pdf

 

主な項目は下記の通り。

 

発明該当性

・人がAIを利用して生成した発明は、特許法に規定する「発明」に該当するか。AI発明(AIが自律的にした発明)についてはどうか。

発明者

・AIを利用して生成した発明の発明者の認定は、従前と同様で良いか。

・人の関与があるが発明者が存在しないという事態が生じ得る場合、当該発明は特許法で保護されるか。権利の帰属主体は誰か。

・AI発明に対して、AIを発明者として認めるべきか。

・出願する際に発明者を偽り得るところ、これは問題か。問題とする場合、どのように対応をするか。

引用発明適格性

・AIを利用して生成した資料・論文等は、新規性・進歩性の判断の根拠(引用発明)となるか。

・引用発明と認定するために満たすべき要件や基準が必要となるか。

新規性・進歩性

・「当業者(その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者)」の考え方等に影響があるか。

・「公知」の考え方に影響があるか。

記載要件

・ 記載を求める事項や程度を変更すべきか。

 

  • 音楽教室の著作権使用料で合意(日本音楽著作権協会;JASRAC)

日本音楽著作権協会(JASRAC)は、音楽教室のレッスンに関わる著作権使用料について、音楽教室の運営事業者で構成する「音楽教育を守る会」と合意したと発表しました。

 

https://www.jasrac.or.jp/information/release/pdf/250228.pdf

 

新たな規定では、音楽教室事業者がJASRACに支払う使用料は、受講者1人当たり年額750円、中学生以下は同100円。個人経営の教室は使用料徴収の対象外。新規定は4月から運用が開始されます。

 

 音楽教室の著作権使用料を巡ってはJASRACが2017年、徴収の方針を表明。これに対し、教室側は徴収権限がないとして提訴しました。22年の最高裁の上告審判決では、教師の演奏は徴収可能とする一方、生徒の演奏は徴収できないと判断しました。

 

  • 代理人の宣誓により印鑑証明書の提出が原則省略可能 (特許庁)

特許庁は、特許庁関係手続における押印について、本年4月1日以降は、代理人(本人による手続については手続者本人)の宣誓により、「印鑑証明書」及び「実印による証明書」の提出が原則、省略可能になると発表しました。

 

https://www.jpo.go.jp/system/process/shutugan/madoguchi/info/oin-minaoshi.html#2-2

 

出願人の名義変更や特許権等の移転登録申請については、押印による手続は続けられていますが、押印した印鑑の印鑑証明書については、代理人等が宣誓書により「譲渡人等の実印である旨」の宣誓があれば代替可能とし、押印された実印に関して合理的疑義が無い限り、提出は原則不要となります。

改正後でも引き続き押印を要する手続(33種類)については、実印又は実印により証明可能な法人の代表者印での手続が必要になります。

 

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発行元: 外堀知的財産事務所

弁理士 前田 健一

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