※「ひこにゃん」、中国で商標登録へ 外堀知的財産事務所 メールマガジン 2025年1月号
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2025年1月号
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┃ ◎本号のコンテンツ◎
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┃ ☆知財講座☆
┃ (12)特許出願の明細書に記載する内容
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┃ ☆ニューストピックス☆
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┃ ■特許庁と中小企業庁が知財経営支援で連携
┃ ■「ひこにゃん」、中国で商標登録へ(滋賀県彦根市)
┃ ■「海賊版サイト」をAIで検知する新システム構築(文化庁)
┃ ■「G-SHOCK」の類似品、不正競争で中国企業に勝訴(カシオ)
┃ ■国際出願関係手数料が1月より改定(特許庁)
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新年明けましておめでとうございます。
昨年は格別のご高配を賜り心より御礼申し上げます。
本年も皆様にご満足いただける知財サービスの向上を心がける所存でございます。昨年同様のご愛顧を賜りますよう、心よりお願い申し上げます。
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┃知┃財┃基┃礎┃講┃座┃
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(12)特許出願の明細書に記載する内容
【質問】
特許出願を行うときには特許取得を希望している発明の内容を誰でもが再現できるように文章、図面で説明しなければならないと聞いています。そうすると、当社で秘密にしておきたい技術事項もすべて文章、図面で説明しないと特許出願を行うことができないのでしょうか?
【回答】
特許出願人が特許権取得を希望している発明を誰でもが再現できる程度に十分な説明を文章(と、必要な場合には図面と)で行うことが特許出願の際に要求されます。この「特許出願人が特許権取得を希望している発明を誰でもが再現できる程度に十分な説明」というのはどのようなものかご疑問にお答えします。
<特許出願を行う発明>
新しく開発した技術内容が、その時点の業界、同業他社の技術動向からすれば、いずれ同業他社も気づくことになると思われるようなものである場合には、特許出願を行うことが望ましいと思われます。いずれ同業他社も気づくと思われる技術内容ならば、先に出願を行って自社で特許権取得する、あるいは、後から特許出願を行う同業他社には特許権成立しないようにすることが望ましいからです。
また、新しく開発した技術内容を採用した新商品を市場に提供したときに、同業他社がそれを購入、等して分析することで、新しく開発した技術内容がどのようなものであるか把握できてしまう場合にも、特許出願を行うことが望ましいと思われます。市場に投入した新商品を分析した同業他社が追随する商品を後追いで市場に投入してきたときに「特許権侵害になります」として排除できる可能性が無くなってしまうからです。
一方、上述した事情などに該当しない場合には、ノウハウとして会社の営業秘密で保護を図る、あるいは、先使用権での保護を検討することがあります。
<特許出願で発明を詳細に説明するのは何故か>
特許制度は、新しい技術(発明)を開発し、それを特許出願によって社会に公開した者に対し、特許庁での審査の結果、新規性・進歩性などの特許性を備えていると認められたときに、特許出願日から原則として20年を越えないという所定の期間、特許権という独占排他権を付与することで発明の保護を図り、他方で、特許出願によって社会に公開された新しい技術内容を特許出願人・特許権者以外の第三者に知らせ、その新しい技術内容を利用する機会を与えて産業の発達を図るものです(特許法第1条)。
発明のこのような保護と利用は、特許出願人が特許出願の際に、特許取得を希望する発明を文章、図面で説明するべく提出する明細書、特許請求の範囲、必要な場合の図面によって図られることになります。
「特許請求の範囲」の記載によって特許権者が独占排他的に行うことのできる技術的範囲が確定します。
「明細書」と、必要な場合の「図面」(機械系の特許出願では発明の説明が容易になるので必ず図面を提出することが一般的です)とによって、新しい技術(発明)が社会に知られ、第三者に利用する機会を与えることになります。
この利用には、特許出願後18カ月が経過してから特許庁によって発行される特許出願公開公報の記載内容(明細書、図面)を参照することで行う技術開発・研究での利用と、特許権消滅後に特許請求されている発明を誰でもが自由に実施(再現)することによる利用とがあります。
「産業の発達」という特許法の目的からすれば、特許権消滅後に特許請求されている発明を誰でもが自由に実施(再現)することによる利用は大切です。そこで、特許出願の際に提出する明細書は「その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したもの」でなければならない、とされています(特許法第36条第4項第1号)。
これは、「実施可能要件」と呼ばれています。
「実施可能要件」が具備されていない場合、たとえ、新規性・進歩性といった特許要件を具備している発明であっても、拒絶されて特許成立しません。
<特許審査基準で説明されている実施可能要件>
特許出願の際に提出する明細書に要求される「実施可能要件」に関して、特許審査基準では、特許出願人が特許取得を希望する発明のカテゴリーが「機械・器具」、「装置」、「材」、「剤」などの「物」である場合、物の使用方法、測定方法、制御方法などの物を生産する方法以外の「方法(いわゆる単純方法)」である場合、物の製造方法、物の組立方法、物の加工方法などの「物を生産する方法」である場合の三態様に分けて、それぞれ、次のように説明しています。
<「物」の発明>
その物を作れ、かつ、その物を使用できるように以下の(1)~(3)の条件を満たすように説明を行う。
(1)「物の発明」について明確に説明されていること
(2)「その物を作れる」ように記載されていること
(3)「その物を使用できる」ように記載されていること
<「方法」の発明>
その方法を使用できるように以下の(1)、(2)の条件を満たすように説明を行う。
(1)「方法の発明」について明確に説明されていること
(2)「その方法を使用できる」ように記載されていること
<「物を生産する方法」の発明>
その方法により物を生産できるように、以下の(1)、(2)の条件を満たすように説明を行う。
(1) 「物を生産する方法の発明」について明確に説明されていること
(2) 「その方法により物を生産できる」ように記載されていること
明細書の記載要件(特許法第36条)に関しては、運用をより明確化し、具体的な事例に基づいて記載要件の判断、出願人の対応等について説明するとして特許庁から事例集が公表されています。
https://www.jpo.go.jp/system/laws/rule/guideline/patent/handbook_shinsa/document/index/app_a1.pdf
<実際の特許出願での明細書の記載>
上述した特許審査基準で要求されている条件からしますと「自社で秘密にしておきたい技術事項もすべて文章、図面で説明しないと特許出願を行うことができないのか?」とご心配されるかもしれません。
しかし、発明は、「木は水に浮かぶ」、「水は高いところから低いところに流れる」等の自然法則を利用した技術的思想の創作です。
自然法則を利用していますから、原因と結果との間に、技術者であればだれでもが理解できる因果関係が必ず存在しているのが発明です。
また、特許出願で特許請求されている発明が誰でも再現できる程度に明細書、図面に記載されているかどうかを判断する者は、明細書、図面の記載だけでなく、その特許出願の出願時点における技術常識をも踏まえて判断します。
更に、特許出願を行う発明は、いずれ同業他社も気づくことになると思われるもの、発明が採用されている新製品を分析すれば内容を把握できるもの等であることが一般的です。
そこで、これらの点を踏まえて特許出願の明細書、図面を準備するならば、「自社で秘密にしておきたい技術事項をすべて文章、図面で説明しないと特許出願できない」ということはあまりご心配されることなく特許出願の明細書、図面を準備できると思われます。
■ニューストピックス■
- 特許庁と中小企業庁が知財経営支援で連携
経済産業省は、中小企業・スタートアップの知財経営支援のため、特許庁、独立行政法人工業所有権情報・研修館(INPIT)、日本弁理士会、日本商工会議所が連携した「知財経営支援ネットワーク」に中小企業庁を加え、支援体制を強化したと発表しました。
https://www.meti.go.jp/press/2024/12/20241204001/20241204001.html
中小企業庁の参加により中小企業庁の「知財Gメン」との情報共有を促進し、大企業と中小企業の知財取引の実態把握を強化します。
また「よろず支援拠点」とINPIT知財総合支援窓口、日本弁理士会の各地域会、商工会議所の経営指導員などが共に協力し、中小企業が抱えるさまざまな経営課題の解決に向けて、知財面も含めたシームレスで質の高い支援を提供するとしています。
- 「ひこにゃん」、中国で商標登録へ(滋賀県彦根市)
滋賀県彦根市は、同市の人気キャラクター「ひこにゃん」を中国で商標登録すると発表しました。関連商品の中国での展開に向けて、模造品対策などのために権利化する必要があると判断しました。「ひこにゃん」の海外での登録は初めてです。
市エンタテインメント課によると、中国・上海で今年開業予定の百貨店内で、日系企業が「ひこにゃん」のキャラクター商品を販売することが決定。これを受け、模倣品などの知財トラブル回避のため、中国で商標登録することを決め、登録に必要な委託料42万9000円の予算案を市議会に提出しました。
https://www.city.hikone.lg.jp/material/files/group/108/R0611hoseiyosangaiyo.pdf
「おもちゃ・ぬいぐるみ」「広告・オンラインショップ」「旅行用品」「衣服」「菓子」の5分野で登録する予定ですが、中国名は商標の「先取り」を防ぐため、登録されるまで非公開としています。
熊本県は、「くまモン」を中国、韓国など17の国・地域で商標登録しています。日本語、英語、中国語、韓国語の名前があり、中国名は「熊本熊」です。
- 「海賊版サイト」をAIで検知する新システム構築(文化庁)
文化庁は、日本の漫画やアニメを無断でネット上に掲載する「海賊版サイト」の被害を防ぐため、サイトに掲載された画像などをAIを使って検知する新たなシステムの構築を目指す方針です。
https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunka_gyosei/yosan/pdf/94149501_02.pdf
海賊版サイトによる被害額は推定で年間2兆円に上ると推計され、深刻な事態となっています。そのため、文化庁では、より実効性の高い対策を進めるため、AIを使った検知システムを構築することを決めました。関連の事業費として今年度の補正予算案に約3億円を計上しました。
具体的には、海賊版サイトのレイアウトや広告、出版社から提供を受けたコンテンツの画像などの情報をAIに学習させ、自動的にサイトを検知するシステムの開発を進めるほか、検知されたコンテンツについて権利者が削除申請の手続をスムーズに行える仕組みの構築を目指すとしています。
- 「G-SHOCK」の類似品、不正競争で中国企業に勝訴(カシオ)
カシオ計算機は「G-SHOCK」の類似品を作った中国の企業2社に対し、不正競争を争う裁判で勝訴したと発表しました。
https://www.casio.co.jp/release/2024/1212-ga110/
同社によると、広東省最高裁判所は、中国企業2社が「G-SHOCK」の類似デザインを許可なく使って消費者を混同させたと判断。不正競争行為に当たるとして、損害賠償金300万元(約6500万円、1元21円で換算)の支払いを中国の企業に命じました。
問題となったのは、「G-SHOCK」の「GA-110」シリーズの商品デザインです。「GA-110」は、中国内では2010年に発売し、16~20年の間、中国の「G-SHOCK」全体の売り上げのなかで1位でした。
一方、意匠権が19年に満了したことを受け、同社は「GA-110」の類似品をめぐり、意匠権ではなく不正競争防止の観点から中国企業2を提訴。裁判では、「GA-110」のデザインが「一定の影響力を持つ商品の装飾」と認められました。
- 国際出願関係手数料が1月より改定(特許庁)
2025年1月1日より国際出願関係手数料が改定されます。
2025年1月以降に本手数料の納付をする場合は、手数料の額及び適用関係に注意が必要です。
https://www.jpo.go.jp/system/patent/pct/tesuryo/pct_tesuukaitei.html
<国際出願関係手数料に係る軽減・支援措置の申請手続>
特許庁では、中小企業等を対象とした国際出願に係る手数料(送付手数料、調査手数料、予備審査手数料)の軽減措置を講じています。
2024年1月1日以降になされる国際出願又は国際予備審査請求からは中小企業等を対象とした国際出願に係る手数料のうち、国際出願手数料、取扱手数料についても、中小企業等を対象とした支援措置が講じられています。
https://www.jpo.go.jp/system/patent/pct/tesuryo/pct_keigen_shinsei_202401.html
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発行元: 外堀知的財産事務所
弁理士 前田 健一
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